東京物語–帝国ホテル-第ⅫI章
撰文:まゆみ 翻訳:小鱉 録音:ハセガ
(第12章)
既に遼太郎は部屋からいなくなっていた。
而遼太郎已經不在房裡了。
「瑠美、お互いのために、二人だけでは、もう二度と会わないようにしよう。俺の選択も瑠美の選択も正しかった。今日は、会えて嬉しかった。」一枚のメモが残されていた。
只留下一張便條紙寫著:「瑠美,為了我們兩人好,就不要再單獨見面了。我的選擇和瑠美的選擇都是正確的。今天能夠見面我已經很開心了。」
涙がとめどもなく流れた。私は、何のために透さんを選んだのだろう。そして、何のために、ここに遼太郎さんを呼び出したのだろう。家のため?いえ、遼太郎さんに、褒めてもらいたかっただけ。遼太郎さんと私にしか理解できない気持ちだから・・・それだけ?
眼淚不停地流下。我、究竟是為了什麼而選擇了阿透呢?還有,我又是為了什麼把遼太郎找到這裡來呢?是為了家嗎?不、只是為了被遼太郎誇獎而已。因為是只有遼太郎和我能夠理解的心情…只是為了這個嗎?
瑠美は、幼い頃から、ずっと遼太郎のことが好きだった。そして、遼太郎も同じ気持ちだと信じていた。だから、遼太郎が、急成長し全国に100店舗近くある家電量販店の娘と結婚すると知った時は、ショックで10日間も寝込んだ。しかし、遼太郎の母親が来ているというので、挨拶ぐらいはしようと1階に下りて行った時、応接室から母とおば様の話が聞こえて来た。おば様は、母に、はっきりと言った。「家を守るためだから・・・」と。すると、母も「うちの瑠美だって・・・」と。
瑠美自小就一直很喜歡遼太郎。也堅信遼太郎也和她是一樣的想法。所以,當她知道遼太郎要和急速發展成全國有近100家店舖的家電量販店的女兒結婚時,震驚到10天臥病不起。但是,因為遼太郎的母親來,而我正打算到1樓打個招呼時,聽到母親和奶奶的談話。奶奶很清楚地說了「是為了守護家族…」後,母親也說了「那我們家瑠美她…」
祖父が亡くなってからの稲垣家は、常にお金の問題があった。体面を保つためには、現在、資産がある相手と結婚するしか、道はなかったのだ。遼太郎だってそうだ。そうでなければ、遼太郎があんな明るいだけが取り柄のような女と結婚するはずがない。私だって、数ある縁談を断り、怪しい過去があることを知りつつ透を選んだのは、まずはお金だ。そして、父親が行方不明、母親は他界、兄弟もいない。
自從爺爺過世後,稻垣家就常常出現財務問題。為了保存顏面,不得不和有權勢的對象結婚,別無他法。遼太郎也是這樣,否則,遼太郎不可能和那種只有外表可取的女人結婚的。而我、拒絕了多樁婚事、選擇了有詭異過去的阿透,首先就是為了錢。而且他的父親行蹤不明、母親過世了,也沒有兄弟姊妹。
何より過去を明らかにしていない透には「稲垣家」の婿に入ることは、決して悪くない条件だったはずだ。お互い求めているものが、合致したのだから、良縁だった。それだけ?いや、透は、私を愛している。そして、私を信用している。私がここで遼太郎さんを呼び出したなんて、想像さえもしないだろう。
對於無論如何都不會表明過去的事情的阿透來說,成為「稻垣家」的女婿絕對不是一件壞事。互有所求、而完美地契合,這就是良緣。只是這樣嗎?不、我是愛著阿透的。而且,他也信任我,根本想像不到我會把遼太郎找到這裡來吧。
初めて会った日、透が自分に惹かれているのがわかった。もちろん、今でもその愛情を感じない日はない。家計を任せてもらってから、文京区の稻垣家の修復工事費も、長年滞っていた四越百貨店への支払いも、何もかも解決した。透には、株をしてみたくて、手を出したら、失敗したと話したら、「お嬢様のすることじゃないよ。瑠美は、そんなことしなくていいんだから・・・」と笑われただけだった。
我知道,初次見面時阿透就被我吸引住了。當然,現在也感受得到這份愛意。自從把家計交給我後,文京區稻垣家的修復工程費和已欠繳多年四越百貨的費用也都解決了。和阿透說要嘗試看看股票,結果失敗了,也只是被笑說「這可不是千金小姐該做的事唷。瑠美妳不必做這些事也沒關係的…」。
ビクビクしていたのに、いくら使ったのかも聞かれなかった。母はもちろん、今ではタキさんのことまで、気にかけてくれる。お父様が元気だった幼少期同様の生活に戻れた。それは、透さんがいたから・・・それなのに、私は、遼太郎を呼び出し・・・なんてことをしてしまったんだろう。深い後悔の念に押し潰されそうだった。
明明非常不安,也不會被詢問使用了多少錢。母親當然也還為了我,連TAKI嬤嬤的事也擔心著。能回到和父親還在世時年少時期同樣的生活,這都是因為有阿透在的關係…即使如此,我卻還做出找遼太郎出來的這種事…。我被深深懊悔的心情壓得近乎崩潰。
瑠美は、慌てて帰り支度を始めた。
瑠美慌張地準備回家。
白金の家に着いた時、透はまだ帰ってきていなかった。瑠美は、バスルームに向かうと、今日、着ていたものをすべて脱ぎ捨て、下着をドラム式の洗濯機に投げ入れ、スイッチを押した。素っ裸で、洗濯槽の中をクルクル回るレースの下着を見ていたら、すべてが終わった気がした。そう。だれも知らないし、だれも知ることもないのだから、過去のさまざまなことと一緒に、今日のこともすべて洗い流してしまおう。私だって、透さんを愛しているのだから・・・
回到白金的家時,阿透還沒有回來。瑠美朝向浴室,把今天穿的衣服全部脫下,把內衣褲扔進滾筒式洗衣機,按下開關。全身赤裸地看著在洗衣機裡滾動旋轉的蕾絲內衣褲,才終於有全都結束了的感覺。是的,沒有人知道、正因為大家都不知道,過去的種種還有今天的事都一併洗乾淨流掉了。我、還是愛著阿透的…
浴槽には、今夜は一段と贅沢なバスジェルを注いだ。
今晚,我往浴缸裡注入更加奢侈的入浴劑。
(最終章)
とめどもなく【とめどもない】 無止盡地
とどまるところがない。終わりがない。際限がない。
無止盡。沒有終點。沒有極限。
体面 面子、顏面
人が世間に対してもっている誇りや面目。世間体。
人在社會上所持有的驕傲或臉面。面子。
取り柄 優點
とりたててすぐれた点。長所。
特別優秀的地方。長處。
ビクビクする 不安
絶えず恐れや不安を感じて落ち着かないでいる様子。
感到源源不絕地恐懼和不安而無法冷靜下來的樣子。
一段と【副詞】 更加
比べると、かなりのちがいのある様子。ひときわ。いっそう。ずっと。
相比之下,更加不同的樣子。格外地。更加。比…得多。
日語造句