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東京物語-帝国ホテル-第12章

東京物語とうきょうものがたり帝国ていこくホテル-だいしょう

撰文:まゆみ 翻訳:小鱉  録音:ハセガ

(第11章)

 あさやさしい日差ひざしが食卓しょくたくにまでそそいでいる。時間じかんながれまで、こんなに優雅ゆうがになるものなのかと、毎朝まいあさおもう。
   早晨溫暖的陽光灑落在餐桌上。我每天早上都想著,連時間的流逝都會變成如此的優雅嗎?

 とおるは、つねばせばとどくところに瑠美るみがいること、そして、瑠美るみ母親ははおや家族かぞく3人さんにん食卓しょくたくかこむことに満足まんぞくし、しあわせをめていた。
阿透對於觸手可及的瑠美、還有和瑠美的母親一起,三個人圍著餐桌這些事,感到很滿足,仔細地品味著幸福的味道。

あのちち日比谷ひびや公園こうえんわかれてから、とおるには「家族かぞく」の時間じかんがなくなった。大金たいきんは、れた。しいものは、なんでもった。おんなにもモテた。
自那天在日比谷公園和老爸分別以來,阿透已經沒有和「家人」這樣相處的時光了。(如今)錢也賺了很多,想要的東西都買到手了,也很有女人緣。

しかし、こころなかは、いつも殺伐さつばつとしていた。だが、いまは、うつくしく家柄いえがら上品じょうひんつま、そして、とおる自身じしんにも名門めいもんという肩書かたがきもくわわった。
但在內心深處總是感到慌亂不安。即使如此,現在已經擁有美麗、家世良好又有氣質的妻子,而且阿透自己也得到了名門的頭銜。

おだやかな生活せいかつとは、このようなものをうのだろう。そだちのさがあたえてくれる居心地いごこちさ。そういえば、仕事しごとでのイライラもすくなくなったようにおもう。かねではえないもの。おれもとめていたのは、かねでもなく、名声めいせいでもなく、こんな時間じかんだったのかもしれない。
所謂安穩的生活就是現在這樣的吧。身世好,家教好所帶來的優雅感真不是話說。話說回來,工作上的焦躁感也似乎減少了很多,這是金錢買不到的,或許我所追求的東西原來不是金錢、也不是名聲,而是這樣的時光吧

 だから、してきた直後ちょくご瑠美るみが「退屈たいくつなの・・・」としたときは、うろたえた。そして、かんがえたのは、瑠美るみ稲垣いながき管理かんりすべてをまかせるということだった。
所以,一搬過來之後,瑠美說出很無聊…這樣的話時,我慌了。之後,我想到的是把所有稻垣家的管理都交給瑠美。

その提案ていあんに、瑠美るみは、ねんばかりによろこび、そして、翌日よくじつには早速さっそく不要ふようなものリストをとおるまえいたのだ。経営者けいえいしゃてみると、たしかにそれらは、すべて無駄むだであった。
對於這個提案,瑠美高興到幾乎要跳起來,接著,隔天就迅速地把不需要的東西列成一張清單放在阿透面前。以經營者的眼光來看,這些東西確實都是不需要的。

さらに、不要ふよう理由りゆう行間ぎょうかん手描てがきでイラストがえがかれていたのもあいらしく、とおるは、だれもらない瑠美るみあらたな才能さいのう見出みいだしたようで、とてもうれしかった。寝室しんしつのクローゼットのなかにある金庫きんこかぎ瑠美るみわたし、とおる個人こじん貯金通帳ちょきんつうちょう証券しょうけん不動産ふどうさん関係かんけい書類しょるい印鑑いんかんなどの説明せつめいをした。
甚至在不需要的理由的字裡行間中,畫了可愛的插圖,阿透對於發現一項瑠美沒有人知道的新才能,而感到非常開心。阿透把房間的櫥櫃裡的金庫鑰匙交給瑠美,並向她說明個人的銀行存簿、證券、不動產書件、印鑑等等。

 それから一週間いっしゅうかんあいだに、稲垣いながきのガレージは、すっかりさまわりをしていた。ねん数回すうかいしからないフェラーリなどを処分しょぶんし、家族かぞくでゆったりれる大型おおがたのベンツと瑠美るみ物用ものよう小型こがたのBMWの2台にだいだけになった。
在那之後的一個星期內,稻垣家的車庫完全變了一個樣。一年內開不到幾次的法拉利被處理掉了,只剩下寬敞舒適的大型賓士和瑠美購物用的小型BMW這兩台而已。

それだけではない。瑠美るみまれるまえから、稲垣いながきつかえていたタキという高齢こうれいばあが、とおるたちのプライベートな空間くうかん、そして、洗濯せんたくから掃除そうじなど、まわりの家事全般かじぜんぱん仕切しきことになったのだ。
還不只這樣,從瑠美出生前就已經在稻垣家服務的高齡嬤嬤-TAKI變成全權負責阿透們的私人空間,從洗衣服、打掃等等貼身的家事。

以前いぜんからいた家政婦かせいふたちは、タキの指示しじがないかぎり、このプライベートの空間くうかんにははいれなくなった。タキは、家族かぞくのような存在そんざいで、はははな相手あいてにもなれるし、信頼しんらいできるから・・・という瑠美るみ希望きぼうであった。
之前的家政婦們只能依照TAKI的指示,這些私人的空間都不能進入。因為TAKI是如同家人的存在,也很習慣和母親溝通、值得信任…這是瑠美所希望的。

 とおるにとっては、とにかく瑠美るみたちがらしやすくなるのなら、いえなかのことなど、どうでもよかったのだ。瑠美るみは、客間きゃくまひとつにあたらしいかぎけ、そこをオフィスとんで、きと稲垣いながき管理かんりをしていた。その姿すがたは、あの婚約発表こんやくはっぴょうをした記者会見きしゃかいけん瑠美るみおなじだった。
對阿透來說,只要是能讓瑠美她們更舒適地生活,家裡變得如何都沒關係。瑠美在其中一間客房附上新鎖,稱呼那裡為辦公室,生氣勃勃地管理著稻垣家。那個身影,和公布婚約的記者見面會那天的瑠美一模一樣。

 会社関係かいしゃかんけいきゃくいえ招待しょうたいするスペースと、家族団欒かぞくだんらんのスペースがはっきりかれ、とおるにとっても、ますます居心地いごこち家庭かていつくられていった。
家裡招待公司方面客人的空間,和家族聚會的空間完全分開,對阿透來說,也是愈來愈舒適的家。

 「しかし、瑠美るみはすごいなぁ。本当ほんとうにあいつと結婚けっこんするとはおもわなかったよ。しかも、いえ無事ぶじ文京区ぶんきょうく文化財ぶんかざいとして来年らいねんから一般公開いっぱんこうかいすることになったんだって?稲垣いながきは、今度こんど白金台しろかねだいだしなぁ・・・小島こじまくんは、経済界けいざいかいでもわりと評判ひょうばんいいよ。ITアイティー関係かんけいがりなかでは・・・」
不過(我說啊),瑠美真厲害啊。真的,我沒想到你會和那傢伙結婚。而且,聽說家裡也安然無恙地作為文京區的文化財,準備從明年開始開放了?稻垣家啊、現在住的又是在白金台啊…., 不過小島先生在金融界的評價倒是滿好的,若是以IT產業中的暴發戶來說的話啦…」

 「遼太郎りょうたろうにいちゃん、瑠美るみめてくれる?」
「遼太郎哥哥是在稱讚瑠美嗎?」

 「もちろんだ。おれたちには、まもらなければならないものがあるんだよ。おれだって・・・」
「當然。我們啊、有不得不守護的東西。而我…」

 そのくち瑠美るみは、自分じぶんくちふさいだ。そして、そのまま二人ふたりは、はげしくもとった。それは、おたがいにおさなころから、ちわびていた時間じかんでもあった。遼太郎りょうたろう腕枕うでまくらで、瑠美るみはいつのにか、ふかねむりについていた。そして、瑠美るみましたときまどそとには銀座ぎんざのネオンとくるまのヘッドライトがひかっていた。
瑠美用自己的嘴堵住對方的嘴。兩人就這樣激烈地索求著對方。這是彼此自幼以來的情感,已經等不住了。瑠美枕在遼太郎的手臂上,不知不覺睡著了。之後,瑠美醒來時,窗外銀座的霓虹燈和車頭燈已經閃耀著了

つづ


うろたえた【うろたえる】  不知所措
 不意ふいたれ、おどろいたりあわてたりしてみだす。狼狽 (ろうばい) する。
    出其不意地被襲擊而感到驚慌失措、狼狽。

さまわり  產生劇變
    ようすや情勢じょうせいがすっかりわること。
    樣子或情勢完全改變。

ばあ

 子守こもり家事かじなどをおこなとしとった女性じょせい。また、そのひとしたしんで
進行看小孩的人和家事有年紀的女性。還有,對那個人親近的稱呼。

仕切しき

 ある範囲はんい物事ものごと掌握しょうあく処理しょりする。仕切しきる。
處裡掌握某些範圍的事物。掌管。

わりと=わりに

 [副詞ふくしおもったよりも。比較的ひかくてき。わりあい。わりと。
貧窮、地位低的人變有錢或得到高的地位。還有,那樣的人。多用於包含輕蔑的語氣時會說。

がり

 まずしかったり地位ちいひくかったりしたもの金持かねもちになったりたか地位ちいたりする。また、そのものおお軽蔑けいべつ気持きもちをめるなどしていう。

ちわびてちわびる】

 をもみながらつづけ、こころつかれる。


日語造句

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