東京物語-六本木 (第一章)
東京ミッドタウンのイルミネーションで、いつにもまして六本木の街はにぎわっていた。青色LEDをふんだんに使用した幻想的な光のページェントは、ここ数年、東京で最も人々に愛されるイルミネーションになっている。肩を寄せ合い、光に酔いしれるカップル。Toshi Yoroizuka の店の前には、今夜も目の前で作られる芸術品ともいえるスイーツを目当てに長い行列ができている。
在東京中城的燈光造景之下,六本木的街頭比往常來得更加喧鬧。以藍色LED燈光持續散發光芒的奇幻風大型燈海在這幾年間,幾乎成為東京最受歡迎的燈海,裡頭滿是肩靠著肩,沈醉在光芒裡的的情侶。米其林三星級甜點店「Toshi Yoroizuka鎧塚俊彥」的店門口,今晚也是被眼前足以被稱做藝術品的甜點所當成目標的長條人龍給佔據著。
真っ赤なベンツのハンドルを握った真美は、東京ミッドタウンの前の赤信号で止まった。
赤紅色的賓士裡握著方向盤的真美,在東京中城的紅綠燈前停了下來。
「いつから、こんなに黄色の看板ばかりが目立つ街になってしまったのかしら・・・。」
「從什麼時候開始,變成這種到處充斥顯眼黃色招牌的街道了呢?」
ため息まじりの独り言がつい、口から出る。
伴著嘆息的自言自語不知不覺地脫口而出。
「少し前までは大人の街だったのに・・・」
「不久前明明還是高級成熟的街道的呀⋯」
ファーストフード店、大型量販店などが進出し、食べ放題の看板までもが目につく。一昔前では、高級感あふれる店が並んでいた六本木の街もずいぶん変わってしまった。
速食店、大型量販店相繼林立,就連吃到飽餐廳的招牌也到處都是,往昔充滿高級感的店家比鄰的六本木街道,終究還是改變了。
信号が青に変わると、慣れた運転さばきで、右折した。
當號誌燈變成綠色之後,以熟練的駕駛方式迅速地右轉。
地下鉄日比谷線の駅からはき出され、列を作って歩く人々を尻目に、真美は駐車場へと車を滑り込ませた。
無視從地下鐵日比谷線的擁擠車站中脫出、排著隊伍走著的人們,真美把車子給滑進了停車場。
真美が住むこの六本木ヒルズは、「ヒルズ族」などという言葉を生み出した高層ビルの住居用タワーマンションだ。巨大なマンションなのに、駐車場から部屋まで、だれにも会わないというのも、疲れている日は特にありがたい。ハイヒールを脱ぎ捨て、郵便物をテーブルに置いた時、鞄の中のスマートフォンが鳴った。
真美住的這間位於六本木的大樓,是「大樓族」之類的詞彙所誕生的高塔型態的居住大樓。雖然明是大廈,但從停車場回到房間裡卻不會遇到任何人的這一點,在很疲累的日子裡卻特別覺得感謝。將高跟鞋脫掉、把信件放在茶几上的時候,包包裡的智慧型手機響起了。
「真美?」
「真美嗎?」
「ハーイ!ジョン!元気?」
「嗨!John!你好嗎?」
そう言いながら真美は、リモコンでブラインドを全開にした。ガラス越しに広がる東京の夜景。目の前には、いつもと違ったライトアップの東京タワーが見える。バレンタインデーらしい暖かいピンクがタワーを照らしている。
這麼說著的真美,用遙控器將遮光簾全開,越過玻璃所映入眼簾的是廣闊的東京夜景。眼前的是和平常不一樣,點亮著的東京鐵塔。就像情人節似的溫暖的粉紅色讓鐵塔明亮了起來。
ジョンは、ニューヨークでの新たな職場の話、セントラルパークでのジョギング、風変わりな日本人に出会ったこと、話題のオーガニックレストランについてなどを話した。相変わらず、品のある落ち着いた話し方に、真美の胸はキュンとした。
John聊著在紐約新公司、在中央公園開的玩笑、遇到了奇妙的日本人,還有去了正夯的有機餐廳⋯等等話題。不變的是對John那有格調而且沈著的說話方式感到悸動的真美。
「そっちは、どうだい?うまくいっている?」
「你那邊呢?怎麼樣呢?一切都還順利嗎?」
「そうねぇ、最近では、芸能人のパーティーなどもオーダーが入るようになって、それが良い宣伝になっている感じね。」
「嗯~最近接到了明星藝人的派對預定,感覺上應該會是不錯的宣傳機會喔~」
「それはいい!真美のアイディアは、独創的だし、顧客の好みを瞬時に汲み取る天才だからな。顧客満足度も高いはずだよ。」
「那很好呀!真美的點子不只很有獨創性、還很能就快速獲取顧客好感,根本是個天才~!對方應該會很滿意才是。」
ジョンは、以前と同じ、真美が一番気持ち良くなる言葉を返してくれる。
John還是和以前一樣,總是回以最能讓真美感到開心的話語。
それから、真美は、先月手がけたカナダ大使館でのパーティーが大盛況だったこと、巷では「ヒルズ族」と言われるこのタワーマンション内での交友関係、ジョンも知っている信頼していたフィリピン人のメイドに裏切られた話、父の病状、そして、この部屋の住み心地などを、時を忘れて話した。
在那之後,真美把上個月企劃的加拿大大使館的派對非常盛大的事、街坊流傳稱為「大樓族」的這棟大樓裡的交友狀況、John也認識的非常信賴的菲律賓人被傭人給背叛、父親的病況、還有住在這個房間的感覺⋯像是忘記時間一樣的聊著。
ひとしきり、お互いの話に涙がこぼれるほど笑い、そして、眉をひそめたりした。そして、ほんの少しの沈黙の後、ジョンがあらたまった声で聞いた。
突然之間,在相互聊天的過程中,真美像眼淚就要湧出來一樣的笑著,接著,突然又蹙起了眉頭。在經過短暫的沈默之後,John口氣轉變的問著:
「真美、幸せ?」
「真美,妳幸福嗎?」
スマートフォンを肩で抑え、ワインセラーから、とっておきのワインを取り出そうとしていた真美の手が止まった。
以肩頸夾著手機,拿著稍早從紅酒櫃裡取出的紅酒,真美的手停頓了。
続く(to be continued…)
日語造句:
ふんだん 源源不絕;豐富的。
あまるほど多くある。豊富 像過剩般的多量;豐富。
お金がふんだんにあるからといって、幸せだとは限らない。
就算錢像源源不絕一樣的多,也未必是幸福。
〜さばき 熟練地
( ↑手先を使ってうまく物事を取り扱うこと。)
(靈巧的以雙手進行事物的樣子。)
茶道は袱紗さばきが美しいと優雅に見えるね。
茶道讓茶具器皿和布絹的使用上看起來美麗且優雅。
〜を尻目に 無視
( ↑ その場のようすをちらっと見てあとは構わず自分の行動を進める様子。)
(悄悄觀察過現場的狀況後,卻又以自己喜好來行動。)
彼は、同僚の慰留を尻目に会社を辞めた。
他無視了同事的慰留和公司辭去了工作。
風変わりな 奇妙的
( ↑ ようすや性質・行動などが普通と違っていること。また、その様子。)
( 樣子或性質、行動等,與平常一般不太一樣的事物;或是樣子。)
彼の演出はちょっと風変わりだよね。
他的表演有點奇妙呢!
手がける 親力親為
( ↑ みずからその物事を扱う。)
(以一己之力來進行或處理事物。)
そんな仕事手がけたことないから・・・できるかなぁ。
那樣的工作因為沒辦法親力親為…有辦法勝任嗎…?
巷(ちまた) 街坊;世道
世の中。世間。 世道;世人之間。
巷では、あの人気グループが解散するっていう噂だよ。
街坊之間都在流傳那個很受歡迎的團體就要解散了耶!
裏切られる 背叛;反叛
( ↑ 辞書形は「裏切る」。約束・信義・期待などに反する。)
(辭書型為「裏切る」;違背了約束、信義或期待。)
信頼を裏切ってはいけないよ。
不可以背叛別人對你的信賴喔!
ひとしきり 突然之間
( ↑ しばらくの間。その間に物事が集中するようすにいう。いっとき。)
( 短暫之間;在短暫的時間裡,事物像集中在一個點上的樣子;一時。)
ひとしきり話題になった映画だね。
真是突然之間就成為話題的電影呢!
とっておき 存放著的 先行
( ↑ いざという時のために、大切にしまっておくこと。また、そのもの。)
( 為了某個時候,先行處理好的事;或先行保管好的東西。)
今日は、とっておきのいい話があります。
今天,有些之前就先處理好的好事情想跟你說。
文: mayumi, 翻訳: Shinn, 録音: hasegawa