「現代ならNo.1ブロガー?」
「日本の古典文学」などと聞くと、「うーん。重い話題だなぁー。」などと思っている方、驚きますよ。なーんだ、今も昔も変わらないじゃん!と。
「枕草子」は清少納言によって平安時代に書かれた随筆です。でも、中をのぞいて見ると、びっくり。清少納言の自由奔放な人柄が見えてきます。
これほど自分の好みを言い切ることだけで成り立っている古典文学も珍しいです。世の中のあらゆることを自分という笊に流し込み、残ったものを列挙しています。自分の好みに対する「肯定感」が、清々しいほどです。現代にいて、ブログを書いていたら人気間違いないと思います。
徹底して迷いのない書き方が新鮮です。「虫は鈴虫がいい」というのは観賞の対象だから、わかりますが、「馬は黒くて少し白が混じっているのがいい。牛は額が小さく白いのがいい。」と、馬や牛の好みまで断定し、さらには、「牛飼いは、大柄で赤ら顔がいい」とまでコメントしています。
ユーモア感覚もすぐれているんです。「ありがたきもの(めったにないもの)」として、「姑にかわいがられる嫁と毛がうまく抜ける銀の毛抜き。主人の悪口を言わない従者(じゅうしゃ)。」など、「それと並べる?」と思うようなものが列記されています。
正直で気持ちを素直に表しているのも人々の共感を得ると思います。「人の噂話はやめられない。人の噂話を聞いて腹を立てる人の気持ちはわからない。」
「人のかたちはをかしうこそあれ(人の顔は興味深い)」そして、「よいできでなくとも、一箇所ぐらい、いいところがあるものだ」と書き添えています。「をかし(興味深い)」のセンスに満ちていて、しかも、それを全開にして列挙する素直さには、脱帽です。現代でもなかなかできないことです。それを平安時代に言い放ってしまうんですから・・・
主観を思い切り出しているのに、社会の細部がよくわかるのは、清少納言のアンテナが優れているからだと思います。
正月1日にくしゃみをした人を挙げ「身分のある人はそんなことで得意顔はしない」などという感覚は記録としてはなかなか残らない貴重なものです。
また、「くるしげなるもの」として「愛人二人から燻されるようにしている男。疑い深い男に深く愛されている女。」と記しています。
現代でもありそうなことだと人の世の変わらないことを大いに感じます。ブログとして「枕草子」をぜひ読んでみてください。共感できるところが満載。清少納言のファンになるかも?
語彙:
言い切る
「自信や決意をもってはっきり言う。断言する。」①という意味と、「言い終わる。最後まで言う。」②という 意味があり、ここでは、①の意味です。
あらゆる 所有、一切
すべての。あるかぎりの。ありとあらゆる。
センス【sense】
物事の微妙な感じや機微を感じとる能力・判断力。感覚。
脱帽
降参の意味を表すこと。
アンテナ【antenna】
本来は、「空間に電波を放射したり、空間を伝わって来た電波をとらえたりする装置。空中線。」のことだが、比喩的に「必要な情報をとらえる手段となるもの。」を表す。
例文:
文: mayumi / 録音:KOSUKE
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